子ども

同性カップルは養子縁組すべき?【子育てする場合、心強い味方になる】

同性カップル
同性カップル
日本で同性婚ができたら理想だけど、現状難しい…。将来的にはパートナーと子育てをしたいと思っているけど、「養子縁組」って実際どうなのかな?

こんな疑問に答えます。

最近、テレビなどのメディアでLGBTQについて取り上げられる機会が増え、社会で性的マイノリティーの存在が認知されてきました。

しかし、法整備はほとんど進んでおらず、G7の中で唯一「同性婚のできない国」として先進国から置いてかれているのが現状です。

「同性婚」という選択肢がない日本の同性カップルは、残念ながら別の方法でパートナーとの関係を証明するしかありません。

なかでも、「養子縁組」は今のところ唯一パートナーと「戸籍上の家族」になれる方法です。

そこで、本記事では養子縁組歴5年の私が【同性カップルは養子縁組すべきか?】という疑問に答えていきたいと思います。

パートナーとの子育て経験も踏まえて「養子縁組をしていてよかったこと」、「こんなことに困った」といった生の声を届けます。

これから養子縁組したい方、もしくはパートナーと子育てを考えている方は是非参考にしてみてくださいね。

この記事を書いた私(Yuri)につい

25歳で初めて女性と交際。その女性こそが現在のパートナーである。
2018年に養子縁組。その後すぐに海外精子バンク(Cryos International)を利用して妊活をスタートする。
2019年に顕微授精でYuriが妊娠→2020年に女の子を出産。
2020年に人工受精でパートナーが妊娠→2021年に女の子を出産。
2021年に凍結胚移植でYuriが妊娠→2022年に女の子を出産。
現在は、パートナーと3姉妹の子育て中。

この記事を読むと分かること

・同性カップルが養子縁組するメリット・デメリット
・同性カップルで子どもを持つなら「養子縁組」はすべき?
・同性カップルで養子縁組してよかったこと・困ったこと【養子縁組歴5年のリアルな声】

同性カップルが養子縁組するメリット・デメリット

同性カップルが養子縁組するメリット・デメリット

まず、2018年9月に養子縁組を結んだ私たちですが、結論から言うと養子縁組を結んだことにより人生が大きく変わりました。

『パートナーシップ制度』『養子縁組』『公正証書』どれをするにしても、「その後の暮らしってどう変わるの?」と思っている方は多いのではないでしょうか?

ここでは、養子縁組歴5年の私が【同性カップルが養子縁組するメリット・デメリット】について解説します。

「養子縁組」のメリット

同性カップルが【養子縁組を結ぶメリット】は以下のとおりです。

・カップルで同じ氏が名乗れる
・法的な保護や経済的メリットがある
・第三者にも身内として主張できる
・パートナーと戸籍上の家族になれるだけでなく、子どもとの関係も証明される

順番に説明しますね。

メリット①:カップルで同じ氏が名乗れる

 

ここは様々な意見があるかと思いますが、同じ名字になれることは素直に嬉しいですよね。

しかし、ここで注意しておきたいのは「どちらの名字にするか選べない」ということ。

必ず2人のうち年上の方の名字を名乗ることになります。

つまり、自分が1日でも早くパートナーより先に生まれているなら「自身の名字のまま」となります。(年上を養子にすることができないため)

名字にこだわらないのであればあまり問題にならないですが、この点は少し注意が必要です。

メリット②:法的な保護や経済的メリットがある

 

これは養子縁組する最大のメリットです。

養子縁組をして法律上の親子になることで、同性カップル間に法律関係が成立します。そして法律上の夫婦に準じた以下のメリットがあります。

・パートナーの緊急時に医療行為の同意等ができる
・パートナーが亡くなったときに相続権が発生する
・パートナーを扶養家族として所得税の様々な控除が受けられる
・パートナーを社会保険の扶養家族にすることで保険料負担を減らせる
・パートナーが死亡したとき、もう一方が遺族年金を受給できる
・パートナーが老人ホームに入る際の保証人になれる

実際、私が出産したときにトラブルがあり「輸血」が必要になりました。

通常は、夫や両親などの親族が署名しなければならないところ、パートナーが「家族」としてサインすることができました。

結果、無事に輸血を受けて回復することができましたが、もしも「養子縁組」をしていなかったら署名できなかった可能性もあります。(病院の判断によりますが)

このような緊急事態が起こった際、「家族」として認められるのは大きいメリットですね。

メリット③:第三者にも身内として主張できる

 

きっと、皆さん一度は経験があると思うのですが…

他人から「どのような関係ですか?」と聞かれたことありませんか?

この質問、なかなか答えづらいですよね。

そんな時に養子縁組をしていれば

「家族です」

これで終了です。

例えば、救急車搬送が必要になったとき、「どのようなご関係ですか?」と聞かれても「家族です」と言えばそれ以上詮索されることはありません。

もちろん、救急車を下されるなんてこともないので安心して寄り添うことが出来ますよ。

メリット④:パートナーと戸籍上の家族になれるだけでなく、子どもとの関係も証明される

 

養子縁組を結ぶとパートナーとは「戸籍上の家族」になることが出来ますが、実は子どもとの関係も証明することが出来ます。

例えば、パートナーが精子提供を受けて出産しても、養子縁組をしていなかったらあなたは「戸籍上は赤の他人」となってしまうでしょう。

しかし、養子縁組をすることで「家族」として扱われるのです。

もちろん2人の関係性は「親」と「子」ではなくなり、例えば「孫」や「兄弟姉妹」のような表記になってしまいますが、それでも家族として認められるのは大きいですよね。

詳しいことは、この後の章【同性カップルで子どもを持つなら「養子縁組」はすべき?】で深堀して解説していきます。

養子縁組のデメリット

続いては、【養子縁組を結ぶことのデメリット】についても解説します。

・勤め先にカミングアウトが必要になることがある
・名字変更に伴う書類変更の手続きが大変
・同性婚が法制化されたとき、結婚できない可能性がある
・戸籍上は家族であるが、あくまでも「親子関係」

デメリット①:勤め先にカミングアウトが必要になることがある

 

デメリットの1つ目は「勤め先にカミングアウトが必要になることがある」ということです。

2人の関係をあまりオープンにしていない場合、一番高いハードルがここかもしれませんね。

特に、名字が変わる側はそれに伴う書類手続きがあるのでカミングアウトは避けられません。

私もパートナーと養子縁組をして名字が変わった際、そのタイミングで職場の管理職にカミングアウトを行いました。

幸い、管理職の方は優しく受け止めてくれたのでよかったのですが、今までに経験したことがないくらい緊張したのを覚えています。

デメリット②:名字変更に伴う書類変更の手続きが大変

 

これは、名字が変わる「養子側」に当てはまることなのですが、この公私に渡る変更手続きが結構大変なのです…。

例えば、以下のような変更手続きを1つ1つクリアにしていく必要があります。

・パスポート
・健康保険証
・銀行
・保険
・その他の氏名変更が必要なあらゆる書類

これは異性結婚した場合も同じような手続きが女性側にありますが、おそらくその大変さは夫には分からないでしょう…。

デメリット③:同性婚が法制化されたとき、結婚できない可能性がある

 

ここがネックとなり、なかなか養子縁組を踏み出せないカップルも多いかもしれませんね。

実際、私の友人同性カップルさんもこのような懸念があり「養子縁組」をしていません。

なぜ、同性婚が法制化されたとき、結婚できない可能性があるかと言うと、

民法736条:養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第729条の規定(※離縁)により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。

このような文言が法律に明記されているからです。

つまり、内容を要約すると『もともと親子関係があった人同士が結婚できてしまうと、社会秩序が大きく乱れるから禁止』ということです。

今後、同性カップルに対してどのような配慮がなされるかは不透明なので、養子縁組はリスクとなってしまいます。

とはいえ、あと何年後に日本で同性婚ができる分からず、このまま待っていたらおばあちゃんになってしまうかもしれません。

なので、私たちは思い切って養子縁組に踏み切りました。

デメリット④:戸籍上は家族であるが、あくまでも「親子関係」

 

ここは複雑なところですが、養子縁組で戸籍上の家族にはなるものの「夫婦」にはなれないので、「親子関係」となってしまいます。

どうしても「婦婦(ふうふ)」として関係を証明したい人にとっては、マイナスになります。

残念ながら、「養子縁組」は同性婚の出来ない同性カップルの代替案ではないので、これは仕方のないことかもしれません。

同性カップルで子どもを持つなら「養子縁組」はすべき?

同性カップルで子どもを持つなら「養子縁組」はすべき?

「同性カップルで子どもを持つなら、養子縁組すべきかどうか?」

私個人の意見ではありますが、養子縁組することをおすすめします。

なぜなら、先にも述べた通り、子どもとの関係を証明することが出来るからです。

もちろん、精子提供を自分が受けて出産する場合には「自分の子ども」として認められますが、問題はパートナーが出産をしたときです。

養子縁組をせずにパートナーが精子提供を受けて子を出産した場合、その子どもと自分の関係は「他人」となってしまいます。

そのため、もしもパートナーが亡くなってしまった場合、あなたが育てることが出来なくなってしまう可能性があります。

もし、亡くなったパートナーのご両親が「子どもを育てる」と主張した場合は負けてしまいます。

また、「家族の証明がない」という理由で子どもの保育園の送迎を断られるという可能性もあるかもしれませんよね。

そういったリスクを考えると、「養子縁組」をしておく方が何かあった時のリスクに対応しやすいと言えます。

実際、私も子どもが3人産まれてから、万が一のリスクに備えて「公正証書」を作ろうとしました。

その際に法律事務所に相談させて貰いましたが、「養子縁組」である程度カバーされているため、今の時点で公正証書を作る必要はないと言われました。

これから妊活をして子育てしていく予定の同性カップルさんにとって、是非参考になればと思います。

同性カップルの子どもは幸せになれる?「ふたりママ」が大切にしている3つのこと同性カップルの子どもは幸せなのか?そんな疑問をお持ちではないですか?本記事では、実際に同性パートナーと3人の子どもを育てる私が【同性カップルの子どもの幸せ】について考えます。これから妊活を考えている方、いつかパートナーと子育てをしたい方は是非ご覧ください。...

同性カップルで養子縁組してよかったこと・困ったこと【養子縁組歴5年のリアルな声】

同性カップルで養子縁組してよかったこと・困ったこと【養子縁組歴5年のリアルな声】

ここまで偉そうに「養子縁組」を語っている私ですが、2023年9月でなんと『養子縁組5周年』を迎えます。

この5年間で目まぐるしく社会、家族構成が変わりました。

手探りの中で進んだ妊活・出産もひと段落し、今は3人の子どもたちの育児に追われています。養子縁組を結んだ2018年9月の私は、こんな未来を想像できていたでしょうか?

そこで、養子縁組歴5年を迎えた私が【同性カップルで養子縁組してよかったこと・困ったこと】を紹介します。

これから養子縁組したい人、迷っている人は是非参考にしてみてくださいね。

同性カップルで養子縁組してよかったこと

・戸籍上の家族になったことで、2人で人生を歩む覚悟が決まった
・子どもになんかあっても、2人で守れる
・毎年「養子縁組を結んだ記念日」を作ることができた

上記の3つは、私が養子縁組を結んで心から良かったと思えることです。

「子どもに何かあっても2人で守れる」というのは、先ほども述べた通り何かあった時でも「自分」もしくは「パートナー」が子ども達をずっと育て続けられるということです。

しかし、このような制度上でのメリットだけでなく、養子縁組を組んで良かったのは圧倒的に「精神的安定」だと思います。

まず、「戸籍上の家族になったことで、2人で人生を歩む覚悟が決まった」というのはとても大きいことでした。

それまでの私たちは、2人の人生(未来)がどこへ向かっているのか分からず、不安で一杯だったのです。

「いつかはお別れしなければいけない」
「やはり、同性結婚なんて無理だよね」
「異性と結婚して、子どもを産むのが幸せなんだ」

と、自分たちの心に嘘をつき、言い聞かせていました。

しかし、「養子縁組」を結んだことで腹を括り、お互い一生添い遂げる覚悟というものができました。

その覚悟ができたからこそ、「妊娠・出産」という次のステージに進めたのだと思います。

そして、今でも毎年「養子縁組を結んだ記念日(「家族記念日」と呼んでいる)」をお祝いし、あの時の気持ちを思い出したりしています。

異性カップルが「結婚記念日」をお祝いするように、私たちもささやかながらでお祝いしています。

私にとって、「養子縁組」こそ、人生の第2ステージの始まりだったのかもしれません。

お祝い写真私たちの宝物。養子縁組を決意しなければ生まれてこなかった3人の子どもたち。

同性カップルで養子縁組し困ったこと

続いては、【同性カップルで養子縁組をして困ったこと】を紹介します。

・他人に聞かれた時や書類記入時に説明が難しい(ややこしい)
・海外帯同ビザが取れない(?)

今の時点では、この2点が挙げられます。

まず、「他人に聞かれた時や書類記入時に説明が難しい(ややこしい)」というのは、子どもが保育園に入園するときに感じました。

わが家では、3人のうち私が2人を産み、1人がパートナーが産んだ子どもなのですが、それぞれ別に書類記入しなければなりません。

さらに、私たち家族の関係性を書くところも「母」と「子」ではなく、「養母」や「孫」、「叔母」などと記入しなければならず混乱します。

そして、ちろんそのままだと市役所も保育園側も混乱するので、全て1から説明しなくてはなりません。

それが結構大変で、面倒だったりもします…。

また、「海外帯同ビザが取れない(?)」というのはまだ海外赴任には行っていないのでなんとも言えないのですが、わが家は将来的に家族で海外移住を考えています。

パートナーの仕事の関係で、海外に3年程滞在予定なのですがその際に私は「配偶者」として扱われるのか不透明です。

もしかすると、配偶者ビザが降りずに一緒に渡航できない可能性があります。

この件についてはこれからしっかり調査するのですが、今の段階ではそのような点で困っていたりします。

まとめ

いかがだったでしょうか?

「養子縁組」を結ぶとことは、2人が戸籍上の「家族」になることを意味しています。

まだ同性婚が出来ない日本で、自分とパートナーが戸籍上関係を持てる唯一の方法だと言えます。

しかし「養子縁組」と聞くと、「なんだか難しそう…」と身構えてしまいますよね。

しかし、驚くことに養子縁組の手続きは10分程で終わりますし、何かあれば離婚届と比べて気軽(?)に離縁することができるものなのです。

また、これからカップルで子どもを持つ予定でいる方には、何かあった時に守ってくれる場合もあるので、これを機にパートナーと「養子縁組」についてよく話し合ってみてください。

2人が納得できる家族のカタチを実現できますように!