こんな疑問に答えます。
新型コロナウィルス流行から3年が経ち、家族でないことを理由にパートナーとの面会や最期の立ち会いを拒否されるといった「医療の問題」が改めて浮き彫りになっています。
最近では、妊活する同性カップルさんも増えてきたため、パートナーの出産に自分が立ち会ったり面会することもあるでしょう。
しかし、同性カップルの中には関係を証明できる物を持っていない、もしくは周りに一切カミングアウトしていないなど、どうすれば良いか分からず不安に感じる人も多いはずです。
そこで本記事では、【同性カップルが病院で面会できるためにやっておくべきこと】について解説します。
万が一の時にどのように備えておくべきか、記事を参考にパートナーと話し合ってみてくださいね。
25歳で初めて女性と交際。その女性こそが現在のパートナーである。
2018年に養子縁組。その後すぐに海外精子バンク(Cryos International)を利用して妊活をスタートする。
2019年に顕微授精でYuriが妊娠→2020年に女の子を出産。
2020年に人工受精でパートナーが妊娠→2021年に女の子を出産。
2021年に凍結胚移植でYuriが妊娠→2022年に女の子を出産。
現在は、パートナーと3姉妹の子育て中。
・パートナが入院したら同性カップルは「家族」と認められる?
・同性カップルが病院で面会できるためにやっておくべきこと
・【体験談】「同性カップル」と伝える?伝えない?心の葛藤
パートナが入院したら同性カップルは「家族」と認められる?
結論から言うと、多くの病院で同性カップルは「家族等」として扱われてないのが現状です。
なぜなら、そもそも「家族」の範を明文化している病院は、全体の約15%にしかすぎません。
実際に医療機関でのLGBT患者対応の現状について、2019年に三部倫子さん(調査当時:石川県立看護大学講師、2021年4月~奈良女子大学研究院准教授)が医療機関の看護部長にアンケート調査を実施しています。
このアンケートは、東京都・石川県・静岡県内の「入院病床20以上の病院」の看護部長を対象とし、252件の回答が寄せられました。
アンケート結果によると「患者さんの家族の範囲を文章で明文化」しているかどうかという問いに、8割以上が「いいえ」と回答しています。
つまり、LGBT患者の配偶者に相当する内縁パートナーにも「家族」と同じように接するかは、多くの病院で院内規定がなく、スタッフの判断に任せられているといえます。
またアンケートでは「成人した患者に判断能力がない場合の手術の同意を誰からとっているのか」「看取りの場面に誰が立ち会えるのか」「ICUなど面会制限のある病棟で面会が可能な人の範囲」については、以下のように回答がありました(複数回答)。
【手術の同意】 | 親族のみ(44.8%)、親族と内縁の同性・異性パートナー(30.6%)、親族と内縁の異性パートナーのみ(10.3%)、その他(6.7%) ※ほかに「手術をしていない」=7.5% |
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【看取りの立会い】 | 親族と内縁の同性・異性パートナー(62.3%)、親族のみ(22.2%)、親族と内縁の異性パートナーのみ(8.7%)、その他(6.7%) |
【ICU面会制限(の病棟で面会可能な人)】 | 親族と内縁の同性・異性パートナー(56.5%)、親族のみ(29.0%)、親族と内縁の異性パートナーのみ(4.8%)、その他(9.7%) |
※参考:三部倫子2019「『LGBTの患者対応についての看護部長アンケート』結果」
以上から、看取りの立会いやICUなどでの面会についてはLGBTパートナーでも可能とする病院は多いものの、「手術の同意」は親族が重視される傾向があるといえます。
もし、これから自身やパートナーの出産などで病院を利用する機会があるなら、どう備えておけばいいのでしょう。
そこで、次の章では【同性カップルが病院で面会できるためにやっておくべきこと】について解説します。
同性カップルが病院で面会できるためにやっておくべきこと5選
もしもの時に備えられることとして、以下のことがあります。
①緊急連絡先カードに必要事項を記入し携帯しておく
②パートナーシップ証明書など、2人の関係を外部に伝えられるものを持っておく
③LGBTに理解のある病院を探しておく
④かかりつけ医に事前に状況を説明して理解しておいてもらう
⑤養子縁組を結んでおく
それでは、詳しくみていきましょう。
①緊急連絡先カードに必要事項を記入し携帯しておく
救急車を呼ぶときなど「いざとなったとき」に必要な情報を書き留めておける「緊急連絡先カード」。
記入には、本人情報、医療情報、緊急連絡先を記しておくことが可能です。
「家族でない人に教えられない」と言われても、本人の意思で緊急時に知らせておいて欲しい人をパートナーにしておくことによって状況を説明してもらえます。
この緊急連絡先カードと併せて、会社に提出する緊急連絡先もパートナーで登録しておきましょう。
②パートナーシップ証明書など、2人の関係を外部に伝えられるものを持っておく
多くの自治体で導入が進む「パートナーシップ制度」で、同性カップルに発行される「パートナーシップ証明書」。
この証明書などにより、カップルが2人の関係を外部に伝えられるツールとして利用できることもあります。
しかしこの証明書には、法的効力はありません。(2023年8月現在)
ただし証明書には法的効力がなくても、パートナーシップ制度を利用する同性カップルのなかには任意後見契約なども締結している場合もあり、この場合はパートナーに万一の事態が生じたら判断能力低下時の入院契約・医療費支払い・財産管理などを行うことができます。
医療現場で2人の関係を聞かれても、証明書を見せれば説明の手間も省けてとても便利です。
せっかく宣誓した証明書を、外部に2人の関係を知らせるツールとして活用するのもオススメですよ。
③LGBTに理解のある病院を探しておく
LGBTに理解のある病院を事前に探しておくことも重要です。
今はインターネットでLGBTフレンドリーな病院を探すことも可能です。
また自治体のホームページでも、各病院の「同性カップルへの対応」に記載している場合があるのでチェックしてみましょう。
例えば、以下の病院ではダイバーシティ推進の一環として、同性カップルへ「家族と同等に扱う」などの対応を行なっている病院です。
・江戸川病院
・横須賀市立病院(市立市民病院、市立うわまち病院)および救急医療センター
・神奈川県立病院機構(足柄上病院/精神医療センター/循環器呼吸器病センター)
・足柄上病院など
④かかりつけ医に事前に状況を説明して理解しておいてもらう
かかりつけ医がいる場合には、事前に状況を説明して理解しておくことも有効です。
今は「パートナー」で理解してくれる場合も多いので、事前に状況を説明し、入院や手術が必要になった場合に担当医に間に入ってもらえるようにしておくと安心ですね。
⑤養子縁組を結んでおく
養子縁組を結ぶことによって、自身とパートナーを「家族」として定めることが可能です。
養子縁組をすることによって、戸籍上の関係が「養母(年上の方)」と「養子(年下の方)」になるため、何か聞かれた時でも「家族です」と言えば問題ありません。
とはいえ、同性婚ではないので「配偶者」という関係にならないのはモヤモヤするところですが、今の日本で家族として扱ってもらうには「養子縁組」が一番強いかもしれません。
それでも認められないなら、言うべきことを言う
最後に、もし病院側から大事な場面で手術同意や面会を断られてしまったら、正しい知識を身につけた上で言うべきことを言うのもありです。
例えば、
・「厚労省のガイドラインでは本人の申し出を優先し、親族に限定していない」
・「個人情報保護法の解釈によれば、本人の同意があれば第三者に情報提供してもかまわない」
・「本人が署名権限を委任したことを病院が拒むいわれはないはずである」
・「親族の署名でないから治療をしないなら、正当な理由なく医療を拒否しており、医師法の応召義務違反である」
・「よく病院は「親族から訴えを起こされないか」と言うが、私たちの合意や意思表示を無にされれば、こちらも訴訟を起こす可能性はある」
・「行政の病院統括部署や地域の「医療安全支援センター」(医療法6条の13により設置)などへ苦情申し立てする」
など、主張できるところは主張していくことも時には大事です。
また、日頃からこういった時にどうすべきか相談できるようコミュニティ活動団体や法律家などと繋がっておくことも大切ですよ。
【体験談】「同性カップル」と伝える?伝えない?心の葛藤
私は現在、同性パートナーと3人の子どもを育てていますが、妊娠トラブルや出産時には双方が病院にお世話になりました。
例えば、私は妊娠初期に「切迫流産」、パートナーは妊娠中期に「子宮筋腫の痛み」により4日間〜1週間入院となりました。
この妊娠中のトラブルによる入院時では、私たちは「同性カップル」ということを言わずに入院しました。
理由は、当時入院した病院が不妊治療を行う病院でもあった為、色々と詮索されるのを避けるためです。
とはいえ、私が入院した病院にはパートナーはほぼ毎日面会に来ていたので、薄々勘づかれていたかもしれません(笑)。
一方、パートナが入院した時にはコロナ禍で完全に面会NGとなっていたので、特に2人の関係を聞かれる機会もありませんでした。
反対に、出産時の入院のときは2人とも「同性カップル」ということを隠さずに病院に話していました。
なぜなら、出産時は万が一「手術」などの緊急対応が予測されるため、その際にパートナーが遠方に住むそれぞれの親族の代わりに署名などに対応できるようにするためです。
さらに、子どもの誕生という素晴らしい時間を「家族」として迎えたかったのもあります。
結果的に、病院は同性カップルでも「家族」として対応してくださり、出産時のトラブル(輸血、陣痛促進剤投与、吸引分娩など)の署名も行うことができました。
とはいえ、私たちは「養子縁組」も行なっているため、戸籍上も家族です。
そういった背景があるのか、それとも単に同性カップルでも「家族」として対応してくださったのかは分かりません。
いずれにしても、同性カップルが家族として何かあった時に対応できるかどうか、なるべく早い段階で病院側に聞くことをお勧めします。
まとめ
いかがだったでしょうか?
最近では、世の中の動きに合わせて柔軟な対応を行う病院も増えてきましたが、日本ではまだまだ医療機関での同性カップルへの対応が定められていません。
そのため、万が一のときに備えてパートナーと準備をしていく必要があります。
妊活、出産、老後など私たちが医療機関にお世話になるシーンを思い浮かべて対策を取っていきましょう。
実際、私たちも「妊娠・出産」という人生の大事なイベントで医療機関にお世話になる機会がありました。
前もって準備するだけで、医療機関と良好な関係を築けるなら早めに備えておきたいものですね。
今、元気なうちにパートナーと話し合って、準備を進めていきましょう!