こんな疑問に答えます。
「同性カップルでいつか子どもを育ててみたい」
このような思いを持つ同性カップルさんは多いのではないでしょうか?
私自身もLGBTQ当事者ですが、かつては「どんな形でもいいから、いつかパートナーと子どもを育ててみたい」と強く願っていました。
同性カップルが子どもを育てる手段は、決して「妊娠・出産」だけではありません。
家族のカタチが多様化する今、「里親」という選択肢もあるのです。
この記事では、同性カップルで子育てをしてみたいと思っている方や、いずれ里親になることも検討している方向けに【同性カップルは里親になることができるのか?】について詳しく解説します。
多様な家族が認められつつある今、「里親」という選択もあることを一緒にみていきましょう。
25歳で初めて女性と交際。その女性こそが現在のパートナーである。
2018年に養子縁組。その後すぐに海外精子バンク(Cryos International)を利用して妊活をスタートする。
2019年に顕微授精でYuriが妊娠→2020年に女の子を出産。
2020年に人工受精でパートナーが妊娠→2021年に女の子を出産。
2021年に凍結胚移植でYuriが妊娠→2022年に女の子を出産。
現在は、パートナーと3姉妹の子育て中。
同性カップルでも「里親」になることができる?
結論から言うと、同性カップルでも「里親」になることができます。
なぜなら、「婚姻しているかどうか」は“里親になるための要件”には入っていないため、同性カップルでも他の要件を満たしてさえいれば里親になることができるからです。
実際、日本でも里親認定された同性カップルが複数組いらっしゃいます。
このように、同性カップルでも「子どもを養育する環境にふさわしい」と判断されれば、日本で「家族」を築く選択ができるのです。
むしろ、今の日本では「里親」が圧倒的に不足しており、養護が必要な子どもは約4万2千人にのぼると言われています。
彼、彼女らは親の病気、家出、離婚、そのほかいろいろな事情により家庭で暮らせず、常に安心できる環境を求めています。
そのため、同性カップルが「里親」としてこのような子どもたちの親になるのは素晴らしい選択なはずです。
そんな「里親制度」ですが、【里親になるための主な要件】は以下のとおりに定められています。
・経済的に困窮していないこと
・里親研修を修了していること
・養育についての理解および熱意があり、児童に対する豊かな愛情があること
・里親本人またはその同居人が欠格事由(※)に該当していないこと
※欠格事由:①禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
②児童福祉法、児童買春・児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及 び児童の保護等に関する法律)又は政令第35条で定める福祉関係法律の規定により罰金 の刑に処され、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
③児童虐待又は被措置児童虐待を行った者その他児童の福祉に関し著しく不適当な行為をした者
参考:https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/01/dl/s0108-4b_0084.pdf
このような要件がありますが、それらをクリアした場合、以下のような流れにそって「里親になるための手続き」に入ります。
ステップ①:児童相談所に問い合わせ
ステップ②:里親登録要件の確認
ステップ③:認定前研修の申し込み・受講
ステップ④:申請書類作成・提出
ステップ⑤:家庭訪問の実施
ステップ⑥:有識者による里親認定部会の開催
ステップ①:児童相談所に問い合わせ
地域を管轄する児童相談所へ「里親登録をしたい旨」を電話にて連絡し、面接の日程調整を行います。 里親登録を検討している段階でも、問い合わせや質問をすることも可能です。
ステップ②:里親登録要件の確認
児童相談所で職員と面接し、里親制度の内容について説明を受けます。
このとき、里親の登録や児童の委託などに関して疑問や不安に感じる点について質問でき、登録の要件や里親として望ましい条件(里親を希望する動機、家族構成、住宅環境等)についても確認します。
ステップ③:認定前研修の申し込み・受講
研修は、「座学2日間」と「施設実習2日間」を受講します。
座学では、専門家や里親経験者から「社会的養護」という概念や「子どもの養育」に関する知識を学びます。施設実習では、「児童養護施設での生活」体験を通して子どもに関する理解を深めます。いずれも、パートナーと揃って受講する必要があります。
ステップ④:申請書類作成・提出
研修を受講した上で、里親登録をしたいという意思が固まったら、管轄の児童相談所に申請書類を提出します。
ステップ⑤:家庭訪問の実施
児童相談所などの職員が家庭訪問し、住居環境や家族関係等について聞き取り調査を行います。(所要時間2〜3時間)
ステップ⑥:有識者による里親認定部会の開催
児童福祉審議会の里親認定部会が2カ月に一度開催され、申請書の内容や、家庭訪問の結果を踏まえて有識者が審議を行います。
ステップ①〜⑤までの工程を経て、審議会における諮問(しもん)結果を踏まえ、知事が里親として認定し「里親登録」がされます。無事認定されたら、里親は2年ごとに登録更新の手続きが必要となります。
このように、里親になるには書類上の記入だけでなく、面接や実際の子どもとの交流などを通して長いスパンで進められていきます。
少しでも興味があるなら、地域の児童相談所に問い合わせてみることをおすすめします。
「里親」と「養子縁組」の違いとは?
「里親制度」について詳しく解説しましたが、「特別養子縁組」との違いが曖昧な人も多いのではないでしょうか?
また、同性カップルでも「特別養子縁組」で子どもを育てることはできるのでしょうか?
結論から言うと、同性カップルは「特別養子縁組」を利用することは出来ません。
なぜなら、特別養子縁組では民法に基づいて法的な親子関係を成立させる制度であり、同性カップルはそもそも法的に排除されているので不可なのです。
そのため、日本で同性カップルが子どもを育てるなら、現状は「里親制度」のみしか利用できないのです。
ちなみに「里親」は、子どもを預かるという意味合いが強い制度であり、法的な親子関係にはなりません。一方で、「特別養子縁組」は、実の親と縁を切って養親と法的に親子関係を結ぶものとなります。
どちらも家庭で子どもを養護するという点で「家庭養護」と呼ばれていますが、特別養子縁組はより「親子関係」が強い制度と言えるのです。
・「里親」:何らかの理由で育てられない親の代わりに一時的に家庭内で子どもを預かって養育する制度で、法的な親子関係はなく、実の親が親権者である。
・「特別養子縁組」:保護を必要としている子どもを実子に近い形で養育する制度。民法に基づいて法的な親子関係を成立させる制度であり、養親が子の親権者となる。
上記のことから、同性カップルは「里親制度」で子どもを養護できますが、「特別養子縁組」は利用することができないということです。
日本で同性カップルが里親になった事例
日本ではまだ事例は少ないものの、実際に同性カップルが「里親」になった事例は存在します!
ケース①:大阪市の30代と40代の男性カップル
ケース②:愛知県の30代男性カップル
ケース①:大阪市の30代と40代の男性カップル
まず最初に、大阪市に住む30代・40代の男性カップルは、2016年12月22日付で日本で初めて「養育里親」として認められました。
こちらは全国的に大きく報道されたため、記憶に残っている人も多いかもしれませんね。
日本で初めて同性カップルが里親を認められた事例となります。
参考:「ハフポスト」男性カップルを大阪市が里親認定 全国で初めて
ケース②:愛知県の30代男性カップル
続いて、2020年の2月10日付でに「養育里親」として認定された30代の愛知県男性カップル。
日本では2番目の事例となり、東海地域では初の同性カップル里親の誕生としてニュースなどでも報道されていました。
まだまだ事例は少ないものの、このような前例ができたことで、今後同性カップルが「里親」として認定される事例が増えていくのではないでしょうか。
まとめ
いかがだったでしょうか?
同性カップルでも「里親」という選択をすることで、家族を築くことができることを知って頂けたかと思います。
とはいえ、里親制度はあくまでも「子どものための制度」であることも忘れてはいけません。
あたりまえの事かもしれませんが、「親として責任持って育てていく」という強い覚悟が必要です。
そして、地域の関係機関や民間団体、里親仲間が一丸となって子どもを育むのが「里親制度」だということも理解しましょう。
もしも、この里親制度で「家族」を作っていきたいと考え始めたら、パートナーとじっくり話し合い、2人揃って地域の児童相談所に相談してみましょう。
検討を重ねた上で、里親として子どもを育てていくことができたら本当に素敵なことかと思います。
「パートナーと子どもを育てたい」と願うカップルさんは、ぜひ「里親制度」も視野に入れてみてくださいね。